ヴェラ=エレン その1「別人」
2007-09-25


禺画像]
「ダニー・ケイの牛乳屋」(1946)の宣伝写真。
MGM時代の彼女とは別人のようです。


 ヴェラ=エレンのダンスを観ていて、私の頭に思い浮かぶイメージは「下位に取りこぼしの少ない大関」です。
 それなりの実力を持っていて欠点というほどものもないが、観客の心に強く迫るだけの何かが技術や身体能力も含めて決定的に不足している。丁度、「いつも十勝前後を挙げ、取り口は正攻法。下位の力士には強いが横綱と当たると負けてしまう大関クラスの実力」が彼女の踊りを評価するのに最適だというのが私の考えです。

 その「隣のお姉さん」的な愛らしさも含め、タップからモダン、ジャズ、ボールルームダンスと幅広いレパートリーをそつなく、一定以上のレベルで踊る実力は評価しなくてはいけないのでしょうが、あまりそつがなさ過ぎると書きようがないし、まして書こうという意欲が湧いてきませんでした。
 
 ところが彼女について調べているうちに気が変わります。
 彼女についての信頼できる詳しい資料は今のところ”Vera-Ellen: The Magic and the Mystery”(David Sorenら 著 2003年) しかない(ネット上の略歴もこれを参考にして書かれたものがほとんど)ようですが、これを読んでいて、彼女の人生の方が自身のダンスについて書くよりずっと面白いと気づいたのです。もちろんそれはフィルムの上に映し出されるヴェラ=エレン自身のダンスとも無縁ではありません。

というわけで、今回は上掲書を参考にしながら彼女の人生を辿ってみたいと思います。

 追々、これまでに出した彼女の写真がMGM以降とは別人のように見える理由も、名前に挿入された「ハイフンの謎」も明らかになるでしょう。
[ミュージカル映画]

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