ヴェラ=エレン その7「オールラウンド」
2007-10-13


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「土曜は貴方に」(1950)より”Mr.and Mrs.Hoofer at Home”
彼女の踊りは色気がないので、お尻を振っているところを。



 ここまで書いて、まだ原著の三分の一。これからMGM時代に突入し、われわれ(私?)の知っているヴェラ=エレンになるわけですが、先はまだ長い。いささか疲れも出てきました。どうせ面倒になって要約度を高めていくと思いますが、このあたりで一休み。
彼女の踊りについて考えてみましょう。

 さてこの本はヴェラ=エレン好きの人が書いたので、当然のことながら、彼女のダンスに対する評価は非常に高い。私から見るとちょっと誉めすぎではないかと思うところもあります。
それでは彼女の踊りのどんなところが優れていると言っているのか。

 まず第一に強調している点は、彼女のダンスのレパートリーの広さ。そして、いずれのレパートリーでも一流の水準に達していることです。

 彼女が踊るダンスは、タップ・ダンス、トウ・ダンス(クラシック・バレエなど爪先で踊るダンス)、パートナー・ダンス(社交ダンスなど相手のいるダンス)、アクロバット・ダンス、プロップ・ダンス(道具を使ったダンス;アステアのステッキ、ビル・ロビンソンの階段など)、ジャズ・ダンスに及びます(それぞれに適当な訳語が有るのかもしれませんが、とりあえず原著のままの用語を使わせていただきます)。
 
これらのレパートリーに関し、他のダンサーとの比較が書かれていますが、ちょっとおもしろいので見てみましょう。

 「ハリウッドの有名なミュージカル女優のなかで、ヴェラ=エレンをダンスで凌駕する者はほとんどいない。アン・ミラーはタップダンスでは彼女と同等だが、バレリーナの優雅さもなく、アスレチックなダンスやパートナー・ダンスは上手くない。
 ジンジャー・ロジャースはパートナー・ダンスは上手いが、ソロダンサーとしての能力には限界がある。
 シド・シャリースはソロで踊るバレエは優雅だし、アステアやケリーと組んでのジャス・ダンスは魅力的で上手いが、タップやアクロバット・ダンスは踊れない。
 エレノア・パウエルは一般に女性として映画史上最高のオールラウンドなダンサーとみなされている。しかしタップやアクロバット・ダンスではヴェラ=エレンと同等かそれ以上としても、バレエの技術や全体的な優雅さでは劣っている。パウエルはたぐいまれなソロダンサーであって、パートナー・ダンスにはそれほど秀でていない。」

アン・ミラーのタップとヴェラ=エレンのそれが同等かなど疑問に思えることも多々ありますが、それぞれのダンサーの特徴を捉えていて、一つの考え方としては面白いと思います。

 さらに、
「あらゆる分野に精通していると言う意味では唯一のダンサー。」
「タップにアクロバティック、プロップ、バレエを組み合わせたダンスは、アステア、エレノア・パウエルを引き継ぎ、更なる高みに導いた。」

とまで言っています。


 二番目に著者が強調しているのは、異なったダンス間の移行が滑らかであること。そして、個々のステップが正確なことです。

「複雑なステップもにこやかにこなしているので、批評家もルーチンがいかに難しいものであるかを見逃しがちである」
「ステップが正確で、ルーチンの正確さと複雑な組み立てを流れるように踊る才能はアステアを凌ぐものがある」。
だそうです。

 そして最後は”Words and Music”で「十番街の殺人」を共に踊ったケリーの言葉。

「彼女は映画界で最高のダンサー(の一人)だ」

です。


 私のような素人には何が複雑なステップかはわかりませんが、彼女のダンスがスッキリしていて無駄な動きがないのは確かです。

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